選ばれる企業とマナー

ホテル・旅館
指宿白水館

“心からの笑顔”に勝るものは無し。
伝統を守り、変化も受け入れる、これぞ名宿の対応力。

鹿児島県南部、指宿にある白水館。1947年創業という長い歴史と風格を備える旅館ならではの“楽しみ方”がいくつもある。その一つは“空間”の楽しみ方。
「当旅館は、道路からエントランスまで300メートルほど続く松並木があります。ぜひゆっくりと松並木を眺めながら、これから宿泊する時間を想像してほしいですね」と支配人・渡部正尚氏は話す。
わずか数分であるが、松並木のおかげで、日常から格別な非日常へと入っていくことができる。また、入口の松並木のほかにも、庭園におよそ800本の松が植えられている。
平安時代の頃から吉祥の象徴とされる松。初代オーナーは、白水館に来られたお客様がいつまでも幸せであることを願って植えられたのかもしれない・・・。

そして、“料理の楽しみ方”。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく出すことは言うまでもない。その上で、「白水館ならではの味を出すために、出汁づくりは妥協しません。“本物”の味を楽しんでいただくのが、白水館の料理を担当する者としての精いっぱいのおもてなし」(総料理長・眞鍋勇人氏)。
もちろんほかにも白水館の楽しみ方はたくさんある。
ぜひ、自分の楽しみ方を見つけ、とことん味わってほしい。

そんな白水館だからこそ、お客様の期待度は驚くほど高い。“ふつう”のマナーやコミュニケーションではがっかりされてしまう。それでも従業員は、お客様の期待を超えることへの挑戦にいとまがない。

「白水館は憧れの職場。『さすが白水館』とお客様に言ってもらうには、白水館のことはもちろん、指宿のこともよく知っていなければと思い、休日を利用してあちこち足を運ぶようにしています」(仲居・中道舞氏)。
「以前、白水館で働いていた母に恥じぬよう、お部屋の清掃や毎日準備するお花など、寛いでいただくために工夫する日々です」(仲居・上田和子氏)。
「フロントはいわば白水館の顔。私たちの対応で第一印象が決まり、その後、たとえどんなに良いサービスを受けても、その時の印象が残ってしまいますので、常に笑顔でいようと意識しています」(フロント・今村美樹氏)。
それぞれの人が、それぞれの場所で、それぞれの役割を全うする。それは当然だと思うかもしれない。しかし、その当たり前を当たり前にできるんのはたやすいことではない。景色や温泉、食事・・・そして人。これらが集約していることが白水館の魅力なのだろう。

写真 支配人の渡部氏
支配人の渡部さんは、白水館に勤めて30年超。時代とともに景色は変わっても、おもてなしの思いは変わらない。
写真 指宿観光マップ
食事の際、テーブルに置かれていた“指宿観光マップ”。持ち帰り、旅の参考にする人も多いのだとか。
写真 気配りに感動
撮影していたとき、「ここに立つと、撮影しやすいですよ」とイスを一つ取り除いてくれた。その気配りに感動。
写真 親しみやすさも一流
朝食時、小さな子供の手をひいて席までご案内する従業員。格式だけでなく親しみやすさも一流。

PROFILE

指宿白水館

指宿白水館

《取材後記》

白水館で働くスタッフは、どなたもとても生き生きしていて、「この旅館が好き」という思いがあふれている。滞在は2日間であったが、強く印象に残ったのは、従業員一人ひとりのさりげない笑顔だ。
70年の歴史がある白水館には、何10年も前から宿泊されるお客様もいるだろう。ということは、お客様のほうが現在の多くの従業員よりも以前から白水館を知っているということになる。
だからこそ、おもてなしにもっともっと心を込める。思いはきっと届く。コミュニケーションとはそういうものだ、と改めて感じた取材だった。