『安全とサービスを基盤として、九州、日本、そしてアジアの元気をつくる』を理念にする九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)。大きな話題となっている『ななつ星in九州』などの鉄道事業をはじめ、まちづくりやシニアビジネス、農業などといった事業を、本社、そして35のグループ会社によって幅広く展開している。
そのなかで驚いたことがある。それは、JR九州の売上のなかで、鉄道事業は41.5%しかないということ(2015年3月現在)。つまり、残りの58.5%は鉄道事業以外による売上ということになる。鉄道事業が売上の大半を占めていると思っていたので、これは意外だった。
「鉄道事業は弊社の柱であることには違いありません。しかし時代やニーズに合わせ、ほかの事業をより一層推進させています。そのためにも、幅広い能力をもった人材が必要となります」(人事部副課長・中嶋氏)。
また、“安全”“サービス”がJR九州の価値。「弊社に入社すると、原則として鉄道事業に関わるので、安全への意識を徹底的に教育します。もちろん、マナーやコミュニケーションの指導も欠かせません」(人事部副課長・井坂氏)。こういった育成のなかで、JR九州が大切にしていることがもう一つある。それは「地域に貢献する気持ち」の素養があるかどうかだ。企業として、アジアや九州など地域で勝つことが目的ではなく、地域と共存・繁栄することを大切にしているからだ。
だからこそ、新たな事業に進出しても、JR九州がやることだから信頼される。これからもそういう企業であり続けるだろう。
JR九州では、お客様からの苦情や、社員から上がってきた意見を、経営陣に報告し、基本的に2週間程度で回答をしている。こういった社内コミュニケーション力、風通しの良さが、良い企業風土を培う一つになっているのだろう。コミュニケーションは接客に役立つだけでなく、社内においても必要な能力だ。
ところで、『ななつ星in九州』のななつが、何を指しているのか、恥ずかしくも取材をするまでは知らなかった。ななつとは、九州の7県を指している。つまり、それぞれの県がスター性があるということであり、「九州を元気にする」という理念がここにも反映されている。理念と行動がきちんと結びついている。